Flit Department of Flipped Learning Technologies 東京大学大学院情報学環・反転学習社会連携講座

2015. 2.21 開催

第3回 公開研究会

学習効果を高める反転授業のデザイン

向後千春 FLIT Seminar

パネルディスカッション

森朋子 FLIT Seminar

森朋子
関西大学教育推進部/准教授

大浦弘樹 FLIT Seminar

大浦弘樹
東京大学大学院情報学環/特任助教

大浦 ここからは、グループディスカッションを通じてフロアのみなさまから寄せられた質問について、パネラーのみなさまよりコメントをいただきます。

反転授業とは

大浦 反転授業の定義はどのようなものか、プリントやテキストで予習する場合は反転授業なのか、という質問からはじめさせていただきます。

向後 定義は研究者によって様々ですが、反転授業ではビデオを用いることが必要です。先生の講義ビデオを用いるのが、もっとも狭義な反転授業だと言えるでしょう。

反転授業というのは、「教える」を組み込んでいるアクティブラーニングだと思います。その意味で、事前に本を読みワークに取り組むこととは意味合いが違いますね。

山内 なぜFlippedかというと、従来の教室での知識習得を宿題で、宿題での応用学習を教室で、という逆転がみられるからです。そもそも、テキストで知識習得できていたならば、授業は必要ないですよね。ビデオというメディアが出てきて初めて、授業の代替が可能になったと考えてよいでしょう。

予習の習慣と時間の確保

大浦 次に、予習についての質問です。ビデオを見てこない、そもそも学習する習慣のない生徒に対してどのように対処すればよいのでしょうか。

向後 予習しないと参加できないワークを設けるなど、予習をしないと恥ずかしくなる授業設計にしています。他には、ビデオを見ること自体を課題や成績に含めてもよいでしょう。

森朋子 FLIT Seminar 自然科学系の授業では、ビデオを視聴してノートをとらせるようにしている事例があります。また、十分にアクティブラーニングの時間が確保できている場合は、その場で15分ほどの動画を見ながら活動することも可能です。山梨大学の事例では、別の部屋で見せているということでした。

山内 アメリカの場合だと、対面授業はビデオを見た上でわからなかった部分を教えてもらう場になっています。つまり、ビデオを見てきた方が得になるような設計になっています。絶対にやってはいけないのが、ビデオの内容を授業でもう一度講義するような、ビデオを見た人が損をしてしまう授業をすることです。

大浦 全学的に反転授業を取り入れるとしたら、どのようなことが課題になってくるのでしょうか。

向後 反転授業は、授業外の学習時間を増やすということが本質です。学習時間が増えることで、成績が上がったり動機付けられたりします。私の場合は隔週で対面授業を行っているので、厳密な意味での反転授業ではありません。このような授業をどう位置づけるのかというのは今後の制度上の課題になるでしょう。

反転授業を行うと成績が上がるということで、たくさんの先生が導入し、学生がパンクしてしまったという話があります。カリキュラムのどこに反転授業を導入するのか等、教員同士で相談する必要があると思います。

山内祐平 FLIT Seminar 山内 実は、アメリカではこの問題はあまり出てきません。なぜなら単位をとるための授業外学習時間がもともと多いので、反転授業を取り入れたからといって余分に学習時間は増えないのです。一方、日本では授業外の課題がそもそも与えられてこなかったために、学生が疲弊してしまう可能性があります。大学全体のレイヤーで考えると、授業を精選する時代がきていると言えるでしょう。

グループワークの設計と評価

大浦 次に多かったのは、グループワークの設計についてです。どのような設計をすればよいのか、アドバイスをお願いします。

向後 溝上先生のご著書『アクティブラーニングと教授学習パラダイムの転換』をおすすめします。私の授業では、単元ごとに到達目標を設け、インストラクショナルデザインを用いてグループワークでの課題をスモールステップにしています。

学生の考える力という観点から見ると、問いの設計が大切になります。頑張ってみんなが力を合わせて解きたいと思うような問いを設けると、自然とグループワークが活性化します。

大浦 評価の方法についてですが、学習や授業の評価、グループワーク自体の評価はどのようにするとよいのでしょうか。

向後千春 FLIT Seminar 向後 グループワークの評価を実質的に行うのは不可能です。メンバー同士でのピアアセスメントはできますが、それを行うと雰囲気は悪くなりますね(笑)。そのため私は、グループワークで得た学びについて記述させる課題を与えています。

知識を測るためにはテストが有効だと思います。けれども、コンピテンシーにはルーブリック評価しかないのが現状ですね。

山内 評価の話は反転授業というよりも、大学の授業で何を測っていくかという話につながっていきます。スタンフォード大学の医学部では、手術ロボットを用いた対面学習を行い、知識が活用できればシミュレーションが成功するというようなパフォーマンス評価を行っています。

FLIT Seminar

反転授業の導入

大浦 反転授業に向いている科目と向いていない科目というのはあるのでしょうか。

向後 実習が入っている科目は向いています。ただし、知識習得の科目でもジグソー法などのグループ学習が有効だという知見も出てきているので、まずは自分が教えている科目でどのようなグループワークや反転授業が可能かを考え、検討していくとよいと思います。

すべての分野で使えると思います。特に、必修科目や国家試験などの動機付けがある授業だとうまくいくと考えられますね。

山内 去年のカンファレンスペーパーを調べたら、分野が広いこともあり、人文社会系が一番多いことがわかりました。他にも理工医系のように正解が1つに絞りやすい科目では、すでに流通しているビデオを用いることができるので導入しやすいと思われます。

大浦 最後に、他の教員に反転授業を導入してほしい場合はどうすればよいか、また、教員間で体系化する際にはどうすればよいか、という質問についてお答えください。

山内 山梨大学の事例について、塙先生、お話しいただけませんか。

新任の先生には、反転授業の方法を伝えていく仕組みをつくりたいですね。今年度は30の講義で反転授業を行ったので、その調査結果が出るとさらなる議論が期待できます。

反転授業によって成績が上がったというデータを見せていくのは重要です。先生の特性も見た上で、それぞれの先生に合った授業をできるようにするとよいと思います。

向後 そうですね。教員以外にマネージャーをつけて、彼らが授業を見てコメントするのが妥当かもしれません。

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