Flit Department of Flipped Learning Technologies 東京大学大学院情報学環・反転学習社会連携講座

2015. 7.25 開催

第4回 公開研究会

学習テクノロジーの未来

白水始 FLIT Seminar

講演2
日本における学習テクノロジーの未来

白水始 FLIT Seminar

白水 始
国立教育政策研究所

協調学習を支えるテクノロジー

私からは、シュワルツ先生が紹介した素晴らしい環境を、日本の一般の先生たちがどう展開していけばよいのかについてお話します。まず、我々が日本で行ってきた協調学習の研究を振り返ると、自分の考えの外化・共有・リフレクションの3つが大事だということがわかってきました。それを踏まえて、大学生を対象に学習テクノロジーを使った授業実践についていくつかご紹介します。

まずはレコノート(ReCoNote)というツールです。資料を読んだ後に自分の解釈をノートに残し、お互いのノートをつなぎ合わせていくことで考えを共有し、多様な観点からリフレクションを促すことができます。最初は、自分のノートから資料へのリンクと、資料から自分のノートへのリンクをつけられるようにしておき、徐々に自由なつなげ方ができるように変えていきました。このように概念地図を作ることで学びを深めるだけではなく、思考のプロセスが分かるようにでき、リフレクティブで協調的な考えのつなげ方の外化にもつながったのではないかと思います。

また、ロボットを学びのパートナーとして入れた時に、どういう振る舞いをすれば人間の学習に役立つのかについても研究してきました。具体的には、ロボットがジグソー法で学ぶ一員としてグループに入り、リーダーとして振る舞う時と他の人に頼るように振る舞う時とで、子どもたちの学びがどう変わるかを実験しました。すると、ロボットがリーダー役をする時は、子どもたちがそれに頼りがちになってしまったのですが、他の人に質問をする時は、子どもたちは自ら進んで考えようとしていたのです。
つまり、建設的なインタラクションを起こすためには、有意義な課題があって、必要不可欠な学習資源がそろっていて、先生が邪魔をしない。そのような環境を設定することが重要なのです。

教育現場への導入のポイント

白水始 FLIT Seminar 一方で、現在の日本ではiPadなどのテクノロジーがあっても、それを現場の先生たちがどう使ったら良いか分からないというギャップがあると思います。そこで、どこが障壁になっているのかを考えていきたいと思います。

まず注目したいのが、昨年度の小中学校を対象にした情報活用能力調査の結果です。これを見ると、成績が上位の学校ほど総合的な学習の時間をうまく活用しており、生徒は自分の考えを構造化して人に伝える機会を多く持てていることが分かりました。しかし、成績が下位の学校の総合的な学習の時間では、自分で好きなテーマを決めて1人で進め、最後に発表するという方法が取られている可能性が示唆されました。つまり、学習プロセスの一番大事な、外化・共有・リフレクションの3つが抜けているのです。ここで学習テクノロジーをどう使っていくかが1つのポイントだと思います。

もう1つ注目したいのが、ジャスパー・プロジェクト(参考:Beating 第37号 http://fukutake.iii.u-tokyo.ac.jp/archives/beat/beating/037.html)です。ジャスパー・プロジェクトでは、複雑な算数の問題を子どもたちが解いていく中で、考えを共有しながら理解を深めていくという課題が設けられています。ドラマ仕立ての問題を解き、類題をこなし、その後生活に役立つツールを作るという素晴らしい授業でした。これをうまく使える学校ではとても良い学びが起きるのですが、今はほとんど使われていません。せっかく良いものを使っていても、先生がその背後の理念を理解しておくことが重要なのでしょう。そのあたりをどう支えていくかも大事なポイントだと思います。

まとめになりますが、現在のテクノロジーの中には子どもたちが主体となって答えを創り出して学べるようなモデルはあります。ただ、それを一般の先生が使えるように、どう支援していけるかという点が非常に大事で、先生たちが何度もテクノロジーを使った授業を試したり、やり直したりしながら、授業の改善を進められるように考えていく必要があると思います。

白水始 FLIT Seminar