Flit Department of Flipped Learning Technologies 東京大学大学院情報学環・反転学習社会連携講座

2014. 2.12 開催

島根大学教育開発センター
反転授業公開研究会(FLIT共催)

授業の常識をひっくりかえす! 『反転授業』を考える

FLIT Seminar

実践発表
ポスターセッション

A. 情報通信I/II

塙雅典 FLIT Seminar

塙雅典
山梨大学工学部

3年生が対象の、専門教育として実践している
予習として、講義動画の視聴とノートの作成を課している
授業中は、ワークシートを使った動画の振り返り(要点や疑問点の確認)、講義内容についての簡単な発表、それに関する議論や質疑応答、演習問題への取り組み、それに関する教員または学生の解説などを行う
反転授業にしたことで、授業外学習の時間が増加し、テストの難易度が前年度並みであった中間試験は前年度よりも成績が向上し、テストの難易度を上げた期末試験でも前年度並みの成績であった

B. 島根大学の反転授業を俯瞰して

森朋子 FLIT Seminar

森朋子
島根大学教育開発センター長

本田周二 FLIT Seminar

本田周二
島根大学キャリアセンター

2013年度に実施した反転学習(C~Hの6授業)の効果について、総体的な評価を試みた
期末試験の結果はまだ出ていないため、十分な分析は行えていないが、反転授業にしたことで「学生の学びに対する意識」に向上がみられた

C. 基礎水理学

宗村広昭 FLIT Seminar

宗村広昭
島根大学生物資源科学部

1~4年生が対象の、専門教育として実践している
予習として、講義動画の視聴、ノート作成、演習問題を課している
授業中は、章末テストの成績で分けられた4名のグループで演習問題に取り組んだり、教員によるノートの個別チェックや、演習問題の解説を行っている
授業中に演習問題を解く時間を確保できるのはよいが、予習の出来具合が、学生の自習する習慣に依存してしまうので対応を考えたい

D. 基礎化学IIA

小俣光司 FLIT Seminar

小俣光司
島根大学総合理工学部

1~4年生が対象の、専門教育として実践している
予習として、講義動画の視聴とノートの作成を課している
授業中は、演習問題に取り組んだり、出席シールをノートに貼るなどしてチェックをしている
6割の学生が予習を欠かさなかったこと、雑談を通じて学生と良好な関係を構築できたことはとてもよかった

E. 生物統計学

小林和広 FLIT Seminar

小林和広
島根大学生物資源科学部

2~4年生が対象の、専門教育として実践した
予習として、講義動画の視聴、予習問題演習(教員により授業までに採点)を課した
授業中は、予習の成績のよい学生と悪い学生をペアにし、採点済み予習演習問題の返却および解説をしたうえで、さらにペアで発展問題演習に取り組んだ
2回目以降の脱落者が少なく、自分がどこを間違っているかをわかった上で授業に参加できたこと、他の受講生の間違いやパターンが見えたことはよかった。期末考査はこの時点で未採点だが、反転学習によって学習効果があったという実感がある

F. 大学で学ぶ教養古典

七田麻美子 FLIT Seminar

七田麻美子
島根大学教育開発センター

全学の1~4年生が対象の、教養教育として実践した(3日間の集中講義)
予習として、講義動画の視聴、資料購読を課した
授業中は、3~4人でのグループワークや、ジグソー法による資料解釈の比較研究を行った
予習は2コマ分の講義動画視聴に加え課題というハードなものだった。全員が動画視聴を完遂するということはなかったが、対面の授業の際のフリーライダーは0で、ジグソーに取り組むために積極的に学んでいた。この反転学習によって、個人的な「物語」体験から普遍的な「物語」観の獲得へと思考や読解が深まったと感じた

G. 大学で学ぶ世界史B

鹿住大助 FLIT Seminar

鹿住大助
島根大学教育開発センター

全学の1・2年生が対象の、教養教育として実践した
予習として、全15回のうち4回を反転授業とし講義動画の視聴、資料購読・ワークシートを課した(同時期開講の「大学で学ぶ世界史A」は全15回ともに反転学習は無し)
反転授業を実施した回では、授業中はグループワークによる事前学習内容のまとめを行った
受講学生の文系/理系構成、グループ分けが異なるため、反転学習の効果は明確ではないが、「世界史A」と「世界史B」を比較したところ、反転授業回の予習時間はBの方がAの倍であり、理解度も教員評価によるとBはAよりも高かった。ただし、Bの理解度はグループ単位である程度左右されることがわかった

H. ヒューマン・コンピュータ・インタラクション

平川正人 FLIT Seminar

平川正人
島根大学総合理工学部

2~4年生が対象の、専門教育として実践した
予習として、講義動画の視聴、ノート作成を課した
授業中は、予習内容に付随する説明や画像資料の提示をした上で、予習とは別の通期課題についてプロジェクトベースドラーニング(PBL)に取り組んだ
反転学習により授業中の知識伝達にかける時間をPBLに置き換えた。情報サービスについて飽食気味にある学生に対し、自ら現在のコンピュータシステムやアプリケーションの問題点を見出す眼を養い、また、それらの課題に対する改善策を、グループワークを通して他者と関わりながら最善の解へまとめていくための一助になったと信じている

FLIT Seminar

ディスカッション

フロアのみなさまには、ポスターセッションの際に、それぞれの実践について活発なディスカッションをしていただいたかと思います。ですので、ここでは、個別の実践に質問を投げかけてお答えいただくのではなく、おひとりずつコメントをいただく形にさせていただければと思います。では、反転授業を実際に実践してみて、感じられた効果と問題点について、順番にお聞かせください。

山梨大学 塙雅典 反転授業を1年半やっていますが、最も大きい効果は学習時間が増加することだと思います。問題点は2つあって、ひとつは学生さんが事前学習として動画を見てきたかどうかを確認できないこと、もうひとつは教室の時間をどうするかということです。今までは90分間話していればよかったのですが、アクティブラーニングをどう設計していくかが非常に難しく、反転授業をやる上ではこれまでと別の素質が求められていると感じています。

島根大学 小俣光司 非常に講義が楽になったというのが、わたしが感じている効果です。まず、自宅で好きな時間に講義ビデオをつくることができます。また、板書が苦手なので、90分間話す必要がないというのは、心理的に助かります。なお、私の授業では授業中にノートをチェックしているので、授業に出て来なくてもいいよと言っています。そうすると、出席者が減りますが、15回分の授業ノートを一気にチェックしてくれという強者も出てきます。そして、実はテストのときには出席者が回復しています(笑)。学生と雑談していると90分間楽しく授業ができるので、僕としては問題がないのですが…森先生、何かありますか?

小俣先生の授業を見させていただいたのですが、1対1でとてもていねいに指導されていました。なお、授業に出なくていいよという点について補足ですが、授業に関して学習時間が確保されていれば教育の質保証として問題ありません。そうであれば、メンタルの部分で課題を抱えている学生さんに対しても反転授業は有効なのではないかと感じています。

島根大学 平川正人 実は、自転車操業的にやったというところがあって恥ずかしい限りなのですが、自分にとってのFDができたというのが効果だと思っています。長く教員を続けている中で、自分自身を見つめ直して鍛える機会をいただいたのがよかったと感じています。問題点というか改善点としては、山内先生がいうところのスタンフォード型の反転授業をやっているので、学生が食いついてくるようなネタをいかにして継続的に提供していくかということです。つまり、演習の練り直しですね。

島根大学 小林和広 効果として1番大きいのは、予習の段階で具体的な検定や分析の課題を出せるので、学生ができている・できていないという状況を、授業の初めに見ることができる点です。そして、できている学生とできていない学生をペアにして総合学習をしたり、繰り返し課題をやらせることで定着率が上がったかなと思います。問題点としては、後半にディスカッションをやろうとしたのですが、ペアにしてもうまく進められなかったので、どのように準備していけばよいか考えています。

島根大学 宗村広昭 最初、森先生に呼び出されて反転授業の講義を受けたときは、概念が理解できず無理だと思ったのですが、実践報告として小俣先生の報告を聞かせて頂き、具体的な方法が理解できたので、その方法をほぼ踏襲させていただきました。よかった点は、途中の説明を話し過ぎて最後にばーっと板書をしてシラバスの内容をとりあえず終わらせるという事がなくなり、時間的制約から来る心的ストレスから解放されたことです。そして、授業中はゆったりとした気持ちで授業ができたので、毎週るんるんでした(笑)。問題点としては、他の学生のノートを写してしまう学生もいるので、反転授業を定着させるのが難しいように感じました。また、他者とのコミュニケーションは得意でないけれども自学ができる学生が、徐々に他の学生に教え始めるというような驚きもあって、そういった相互作用を利用した実践ができればいいなと思っています。

島根大学 鹿住大助 授業中に学生が歴史について語る時間をとりたいと思っていたので、その時間を作ることができたのはよかったなと思っています。けれども、グループワークに教員がどのように介入したらいいのかという点については、まだうまくできていません。また、歴史観という価値観を伝えることも歴史教育のポイントなのですが、反転授業ではそれをできなかったので、これからの課題かなと感じています。

島根大学 七田麻美子 反転授業というよりもeラーニングの課題なのですが、なかなか取り組まない学生をどうするかというのがあります。また、対面での学習の方があまりにも濃い内容になってしまったので、「2回目の授業を受ける際の負担感が半端なかった」と学生から言われました(笑)。よかった点としては、古典を学ぶ上で必要な、文章の細部を丁寧に読むことを遠慮なく講義できたことです。具体的には逐語訳的な解説を延々と話すことができたことです。

では最後に、島根大学での反転授業の実践を分析してくださった本田先生、基調講演をしてくださいました山内先生、溝上先生より、ひと言ずつ総評をいただけますでしょうか。

島根大学 本田周二 今回は、分析の結果として、反転授業の効果が出なかったので、ふざけるなと言われそうなのですが・・・(笑)。ただ、学習時間の増加については測定していませんが、何らかの効果が出ていると思われます。また、学習観はすぐには変わりませんので、もう少しロングスパンで見ていけたらいいのではないかと考えています。

京都大学 溝上慎一 今日はほんとうに勉強になりました、ありがとうございました。自分にとってのFDになったというお話もありましたが、反転授業をやってみることで、つまり通常とは違うスタイルの授業をやることで、科目の中で扱う知識や学習課題を別の角度から見る機会になるのだと思います。そういう意味では、反転授業の効果以上の価値があるように、みなさんのお話を聞いていて思いました。そして、何を目指して授業を作っていくのかという学習目標を達成するための方法として、反転学習があるべきだと考えています。言い換えれば、従来の方法では落第していた学生が、反転学習によって成績が上がるだけでいいのかということも、これから論じていければと思っています。さらに、従来の授業ではできていなかった知の社会化などを、授業の目的に入れていくことも、今後の課題になっていくのかなと感じています。今日はいろいろな実践を聞かせていただいて、とてもよかったです。

東京大学 山内祐平 実は来年、東京大学でも反転授業をやらなければいけないので、とても勉強になりました。サンノゼ州立大学のような方法は、日本の理系でも間違いなく大丈夫だなという手ごたえが得られたのが、とてもよかったと思っています。割と日本の大学教育は、先生がんばれという風潮があります。けれども、いかに合理的に、さまざまな工夫で学習を支えられるかという点について、いろいろなパターンが見えてきたのはいい傾向だと思いました。また、1番難しいことは、対面学習のデザインです。90分間、対面で何をやるのかということが、今後より大切になっていきます。そして、それこそが、大学教育の1番大切な部分を考えるための本質的な問いだと思います。これから先、大学の授業が基本的なところから変わる可能性がある、そのきっかけに反転授業がなるのではないでしょうか。今後、今回の研究会のような動きが続いていけばいいなと思っていますし、何らかのお手伝いができれば幸いです。

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